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vol.2


続・カリフォルニア弁護士日記



「シアトルへ」
米国カリフォルニア州弁護士
石鍋法律事務所
石鍋賢子
visalaw@ishinabe.com


 毎年6月の第二週、木曜日から日曜日にかけて、全米移民弁護士会の総会・研究会が開かれる。移民法弁護士会の合同研究会としては、そのほかにミッドイヤーコンファレンス、州別研究会などもあるが、たいてい週末を含んで2日で終わるから、3泊4日というのは、各種弁護士会による研究会の中でも長いほうだろう。全米で合計5,000人を越す移民法弁護士会員にとって、この総会は大事なイベントである。参加者は当初約2,000人と予測されていたが、今回は直前まで申し込み者が後を絶たなかったらしく、6階建てのコンベンションセンターをほぼ貸し切る形となった。開催地は毎年変わり、 全米の各州を順々にめぐるようなかたちだ。今年は、シアトルで開催された。
 期間中、各種のレクチャーに参加することが当然第一の目的だが、講習は二の次で、他の弁護士とのネットワーキングに励む、という人もいる。実際、だだっ広い講演会場で周りを見まわすと、他州の弁護士ばかりで、州の境を越えて、共通の話題を持つ移民法弁護士がこんなにいるのか、と思うと、妙な感慨を覚える。というのも、通常弁護士は州内の業務に限られているため、例えばサンディエゴ弁護士会、あるいはカリフォルニア州弁護士会といったような、地域的なフォーラムで集まることになるからだ。


 日中のレクチャーは、総合基本講座、分野別の2コース、更に応用編、という4つのコースに分かれた。午前8時半から午後5時まで、1時間から1時間半単位でぎっしりプログラムが組まれており、どのコースのプログラムでも、自分で適宜選べるようになっていた。レクチャーと言っても、基本講座を除いては、3〜5人のパネリストが最近の傾向や、今後の政府の動き、新法案に関する情報などに関してコメントしあうという形式をとっていた。 また、聴講者の多い中核の2つのコースでは、メインの会議室にステージを設けても、部屋の中央より後ろに座るとパネリストの顔が良く見えないくらい広い。したがって、正面には巨大スクリーンに発表者の顔が映しだされていた。さらに、午後は7時から10時まで、希望者のみで丸テーブルを囲み、講師への質疑応答をするための時間も設けられていた。


 ところで、移民法法廷への出頭はほかの訴訟事件と同じく管轄が限られているため州を超えた弁護士活動はできないが、移民局書類審査センターは法廷とは異なり、どの州の弁護士でも書類申請ができる。面接などを行う地元移民局とは別に、請願書類を郵送で受理し書類審査を行う処理センターが全米に4箇所あり、例えば、カリフォルニア弁護士でも、クライアントがテキサスにある会社であれば、 テキサス地区の移民局処理センターに請願を提出することができる。これは仕事の範囲が広がるようでいて、一方では、逆にほかの地域の情報を得ておくことも必要になるので、日頃からオンライン情報を敏感にキャッチしなければならないが、レクチャーで、ほかの地区のエキスパートや、移民局・労働省・国務省領事部などの政府関係者からじかにコメントを得られるというのは、大変貴重な機会だった。


 さて、レクチャーも大切だが、せっかく南カリフォルニアからオレゴン州を超え、さらに北にあるワシントン州まではるばる出張するわけだから、多少の観光も悪くはないだろう。日中は殆どつぶれてしまったが、それでも昼休みやレクチャー終了後の時間をできるだけ利用した。シアトルは何と言ってもシーフード、そして某コーヒーショップのメッカだ。昼の時間に海岸沿いのマーケットへ足を伸ばしてみると、八百屋、ベーカリー、魚市場、その他諸々の店が軒を並べ、観光客と地元の買い物客でごった返していた。オイスターを頼むと、生きたまま水槽から取り出しその場で割って、レモンの輪切りとソースを添えて出してくれた。 探せばおいしいおすし屋さんがあったに違いない。
 シアトルは雨や曇りの日が多いことで有名だが、この期間中、珍しくお天気の良い日が続いた。また、日没が遅く、午後10時位にならないと暗くならないのには驚いた。ホテル最上階のレストランではディナーの予約が8時まで取れなかったが、食事の間十分景色を楽しむことができた。部屋に戻る頃には、遠くに見えるレイ二アー山の冠雪が夕焼けに映え美しかった。仕事の合間にこんなちょっとした観光もできて、有意義な4日間だった。
 来年は風の街、シカゴだ。


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