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vol.1
ワールド トレンド レポート
ロシア
 ロシア民法典

佐藤賢明(東アジア経済法律事務所ロシアプロジェクト研究員・二松学舎大学講師)

 ロシア連邦における社会改革の中心課題は経済改革である。ソ連邦崩壊の遠因が経済問題であったことは容易に推測できる。ロシア連邦となった現在もなお、社会主義計画経済から市場経済への移行を模索中である。社会主義経済からの脱却をはかり、市場経済を建設そして確立するため、さまざまな経済関連法令がこれまで採択されてきた。その中で重要な法令として民法典があげれらる。民法典は第三部まで予定されており、これまでに、第一部は’94年10月に採択され’95年1月より施行、 また、第二部は’95年12月採択され’96年3月から施行されている。第三部については現在準備中である。第一部及び第二部は全四編60章1109条からなっている。第一部は基本規定、会社法、契約法、所有権及び債権法等から、第二部は商業法、流通法及び金融関連法などからなっている。以前の社会主義国家では認められていなかった権利等を法律の形で明言したことは、ロシアの民主化が進んだことのあらわれのひとつといえる。以下民法典の一部を列挙する。


民法典の7つの原則(第1条)
[1]民事法令参加者の平等、[2]所有の不可侵、[3]契約の自由、[4]私的行為への恣意的干渉の禁止、[5]民事法上の権利履行の自由、[6]侵害された権利の保障、 [7]侵害された権利の裁判所による保護をあげている。 これらの原則は近代市民国家が市場経済を導入していく過程で、他の西欧諸国がこれまでに築いてきたものにほぼ合致し、今後ロシア連邦が市場経済社会へと移行していく上でそれぞれ重要なものである。


人(第17条ないし第47条)
 民法典の中でも特に重要なのが人であり、個人の財産の所有を制限していたソ連時代の抑圧された時代から自由な時代への変化の表れである。そしてこの自由を法的にも保証したものが 民法典中の第17条ないし第47条なのである。ここでは、財産を所有する自由、債権債務関係への参加の自由、企業活動の自由そして芸術活動の自由等を保証している。


所有権(第209条ないし第306条)
 所有形態として、私的、国有、公有及びその他の所有形態が認められている。その内容は占有、使用、譲渡、及び処分権である。所有権の主体には、市民、法人、国家であるロシア連邦、連邦構成主体及び地方自治体である。外国人(自然人および法人)も含め 土地・建物などの不動産の所有権も認められているが、不動産権登記法により登記が必要である。市民による農業用地の所有に関しては認められていない。現在、新土地法典が議会で検討中であり、この法律が採択されることが待たれている。


法人(第48条ないし第123条)
 法人を民法典は営利団体と非営利団体に分けている。
営利団体のなかの会社を人的会社と物的会社に分け、人的会社には合名会社と合資会社、物的会社には株式会社、有限会社及び補充責任会社の各形態がある。
 非営利団体には、消費協同組合、社会団体、宗教団体、基金(ファンド)、施設そして法人の結合体である協会や連合会等がある。消費協同組合の構成員には、法人や自然人がなる。同じような団体としての生産協同組合は、営利を目的としている。社会団体には、政党、労働組合、芸術家団体などがありそれらに関する特別法がある。
基金(ファンド)はロシアでは比較的新しい団体である。一応非営利団体であるが、新興財閥の資産隠しのために利用されているといわれている。施設の多くは国有企業や自治体企業などのいわゆる公共企業の非営利版である。
 法人の活動内容によりライセンス(特別許可)が必要とされる業種がある。例えば、銀行、証券、保険、医療、建設、輸送、報道、通信、地下資源活用などの事業内容を持つ法人ではライセンスが必要である。法人は登録されなくてはならない。登録機関は、法務省付属の機関及び各地の行政府に登録所がある。

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